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最近の株価下落を受けて、自社株買いの拡大を要請する書簡を投資先企業に対し送付

2024年8月7日

最近の日本株の歴史的な下落を受け、投資先企業の取締役会に対し、自社株買いの実施またはその加速を促す書簡を送付しました。

取締役会 御中


親愛なる取締役の皆様、日頃より不断の企業価値向上への取り組みを頂き、また株主に対して惜しみない対話の機会を賜り、誠にありがとうございます。


ご高覧の通り、直近の日銀による金融政策及び米国雇用統計の発表を機に、金融市場は円高と株価急落の同時進行の最中にあります。本日は現況についての私共の所見と方針、かつご経営者の皆様にご検討いただきたい事項をお伝えします。今回の市場の急落は稀にみる規模ですが、これは皆様にとってはピンチではなく、むしろ企業価値向上の取り組みを加速する絶好の好機と私共は考えます。投資先の皆様には好機を逃すことなく迅速な行動を採って頂きたく、本レターをお送りいたします。本稿について取締役会で検討・意思決定いただけますようお願い申し上げます。


企業価値向上への変わらぬご尽力と、株主との対話の機会を常にご提供いただき、ありがとうございます。


ご承知の通り、現在、円の急激な上昇と株価の大幅な下落が発生しており、これは日本銀行の最近の金融政策の変更や米国の雇用統計の発表によって引き起こされています。本日は、現在の状況に関する私たちの観察を共有し、方針を示し、いくつかの点についてご検討いただければと思います。


この市場の急落の異常な大きさにもかかわらず、私たちはこれを後退ではなく、企業価値向上の努力を加速する絶好の機会と捉えています。この機会を活かすため、迅速な行動を取ることを強くお勧めします。この書簡で述べたポイントについて、取締役会での検討と決定をお願い申し上げます。


1.今回の混乱の背景について


景気後退局面入りを示唆した8月2日の米国雇用統計そのものは日本に限らず世界株式市場の調整要因でしたが、加えて米国の景気調整は同国の金利低下→日米間の金利差縮小→円高という経路でも日本企業の業績や株価にプレッシャーを与えます。そのため、とりわけ日本株式市場の影響が大きいこともファンダメンタルズの観点から説明がつくものでした。先週の日本市場の株価下落が大型株主導であったことともファンダメンタルズ分析を支持するものです。


しかし月曜日の更なる急落は上記ファンダメンタルズ要因を大きく逸脱したものであり、セルオフの対象も広く中小型株や円高の恩恵を受けるはずの企業にまで幅広く波及しました。これは市場の様々な取引において損失の拡大に伴うマージンコールと半強制的なポジション解消が大量発生した際に特徴的な状況です。円の低金利継続を前提としたキャリートレード、リテール投資家による信用買い、ボラティリティをショートする機関投資家など、主体や取引形態は異なれど多くのレバレッジ取引が先週時点で積みあがっており、金融政策や雇用統計の発表をきっかけにその巻き戻しが起こっている状況と推察します。


振り返ってみれば過去数年の低リスク・高リターンな市場環境は多くの市場参加者にとって心地よいぬるま湯であり、レバレッジを活用したリターン拡大を誘引し、結果として市場の変化に対して脆弱な構造になってしまった様です。


2.私共の方針について


この様な環境で私共のポートフォリオも時価評価額という点では相当の影響をうけているものの、上記に記載したような「ポジション解消」の必要に迫られてはおりません。私共はご経営者の皆様と時間軸を共有する長期投資家であると自負しており、一切投資に(ポジション解消の原因である)レバレッジを用いておりません。


加えて私共の投資先はいずれも円高や金利上昇といった環境変化に対して耐性のある強い事業競争力と経営力、そして強固な財務基盤を有しておられます。改めて大きな運用方針の見直しは必要ないと考えています。


また、ありがたいことに私共の顧客も長期投資の哲学をご理解いただいております。このような多くの顧客に支えられ、むしろ現在のようなファンダメンタルズ要因を超えた市場調整において投資を積み増す機会を伺っております。


3.ご提案


長年の投資と対話から私共の考えは容易に想像されるかもしれませんが、私共が取締役の皆様に是非ご検討いただきたいのは自己株買いです。すでに自社株買いの枠を確保し運用されている会社に置かれましても、その枠を拡大することによって、企業価値向上を加速する千載一遇の機会を存分に生かしていただきたく存じます。


私共は原則として、事業から生み出された利益は将来の更なる利益成長を生み出す事業への再投資に充てられる事が最も望ましく、また平時における株主還元は継続的な増配が王道と考えます。しかしながら、足元の市場の混乱により、貴社株価は一層割安に評価されております。この様な状況においては(1)市場に対するシグナル効果を持ち、(2)一株当たり利益改善を通じた企業価値向上効果を持ち、(3)発行済株式総数の減少を通じて将来的な配当負担を減らせる、自己株買いをご提案したいと思います。


今回私共から具体的な金額・株数についての提案は致しません。例え少額であっても速やかにご実施頂く事が今日のような環境では重要であり、それによって取締役の皆様の貴社事業・財務・株価水準に対する自信を発信する事ができます。その様なアクションが株主の皆様に与える安心は計り知れず、今後長期にわたって貴社ご経営への信頼の礎となるでしょう。


こちらのレターを次回の取締役会でご議論頂き、ご決定いただける事を期待しております。


ご不明な点があれば何なりとダルトン・アドバイザリー株式会社のメンバーにお問い合わせください。


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