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投資先企業の経営陣および取締役に対し、活動方針を示す書簡を送付

2024年12月17日

ダルトン・インベストメンツ(以下「ダルトン」)は、投資先企業の経営陣および取締役に対し、ダルトンの活動方針を示す以下の書簡を送付しました。

東京証券取引所、経済産業省、金融庁が共同で進めている資本市場改革は着実に進展しており、とりわけ東証の「資本コストや株価を意識した経営」により、多くの上場企業において企業価値向上の取り組みが実態面・開示面の双方で大きく改善されました。


現状、プライム市場上場企業の約8割が対応を開示していますが、開示や取り組みの質に大きな差がみられます。ダルトンは、すべての投資先の皆様が形式的・初歩的な開示にとどまらず、中長期的な企業価値向上と直結した高度な対応を行っていただけることを期待します。


株主として投資先の企業価値向上を支援するため、ダルトンでは以下の活動を行っています:


1.     投資先企業の現状を公開情報に基づき独自の分析評価を提供

2.     投資先企業との対話、認識のすり合わせ

3.     取締役会宛に改善余地を提案、フィードバックを依頼

 

 

書簡の全文:

 

令和6年12月吉日

株式会社●●

取締役会 御中

 

親愛なる取締役の皆様、

 

平素より大変お世話になっております。世界の資本市場は本年も、非常に多くの政治・経済・地政学イベントに揺さぶられてまいりました。その最たるものの一つが8月上旬の株価急落でしたが、その際にもレターでお伝えした通り、私共は長期投資の哲学をご理解・ご指示いただくアセットオーナーのお客様、そして環境変化に対して耐性のある強い事業競争力と経営力を有しておられる投資先企業の皆様のおかげで、変わらぬ運用方針を維持することが出来ました。改めて皆様には、日頃より不断の企業価値向上への取り組みを頂き、また株主に対して惜しみない対話の機会を賜っておりますこと、心より感謝申し上げます。

 

昨今、私共は東京証券取引所(以下、東証)・経済産業省・金融庁が一体となった資本市場改革がいよいよ実態を伴ったものになってきたと感じています。とりわけ東証の「資本コストや株価を意識した経営」(以下、東証要請)により、多くの上場企業において企業価値向上の取り組みが実態面・開示面の双方で大きく改善されました。東証要請のフレームワークにおいては私共投資家・株主との対話も価値創造サイクルの一部として位置づけられており、その責務を果たせる様、私共も建設的な対話とエンゲージメントに一層取り組む所存です。

 

現状、プライム市場上場企業の約8割が東証要請に関する対応を開示済みという状況を踏まえれば、本要請はすでにその役割を終えていると思われるかもしれません。しかし、私共の最大の問題意識は企業によってその開示・取り組みの質の差が著しいことです。優れた開示に基づき、対応を推進し、企業価値向上に向けた取り組みと実効性の高い連携を行っている企業もある一方、残念ながら東証要請の趣旨を理解していない、あるいは意欲がないまま形式だけ整えたと思われる企業も少なからず存在します。中には、資本コストや株価に関する一切の言及がない「開示」企業すら存在します。このように上場の恩恵のみを享受し、責務を果たさない姿勢が許容されれば、誠実に取り組む上場企業の意欲は削がれ、日本株式市場の変革のモメンタムが減退し、形式的な変革にとどまりかねません。

 

今回、私共から提起させて頂きたいのは、本年2月に東証が発表した「投資者の視点を踏まえた『資本コストや株価を意識した経営』のポイントと事例」(以下、「ポイントと事例」)に基づく、取り組み・開示内容の妥当性、更なる改善余地の検証です。「ポイントと事例」には取り組みを本質的なものとするためのポイントが10項目列挙されています。

 

 

https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/jr4eth0000004vj2-att/240201.pdf

 

私共はすべての投資先の皆様が形式的・初歩的な開示にとどまらず、中長期的な企業価値向上と直結した高度な対応を行っていただけることを期待します。事業の特性や企業としてのステージによって重要性の高いポイント(マテリアリティ)は異なりますが、高度な対応とは少なくとも過半のポイントに対応し、特に各社にとってマテリアリティの高い項目への対応がなされていることです。

 

「ポイントと事例」は東証要請の単なる要約ではありません。実際、これに即して会社の開示を分析すると多くの上場企業に共通する重要な課題が浮かび上がります。いくつか私共の問題認識を下記に挙げます。

 

1.     株価を意識した経営について:PBR1倍を超えて「株価を意識した経営」を実践する経営は少数。より踏み込んだ市場評価の分析及び(ディスカウントの場合)原因究明と対応が求められる。特に事業領域が多岐にわたる企業においてコングロマリット・ディスカウントを重要な経営課題として認識すべき

 

2.     適切なバランスシートのあり方について:多くの企業においてキャッシュアロケーション計画の開示がなされていることは近年の進歩。しかし、議論の対象がキャッシュフローにとどまる事が多い。フローの改善は限界的な資本効率の悪化を抑制するが、資本効率を改善するためにはストック(最適資本構成、必要現金)を見直さなければいけない企業が多い

 

3.     適切な資源配分について:ROIC/ROEの自己分析や目標が連結ベースにとどまる企業が多い。事業単位あるいは投資案件単位で資本コストに照らした資本配分の判断がなされるべき(特にコングロマリット企業)。

 

4.     資本コストについて:上記論点のいずれも適切な資本コストの把握と開示が出発点。市場データから資本コストを計測するアプローチには限界があり、特段の事情が無ければ8%程度の資本コストと認識することが望ましい

 

以上を踏まえ、株主として投資先の取り組みに資することを企図し、私共は投資先各社に対して下記の活動を行っています。

 

1.     投資先企業の現状を公開情報に基づき独自の分析評価を提供

2.     投資先企業との対話、認識のすり合わせ

3.     取締役会宛に改善余地を提案、フィードバックを依頼

 

投資先との対話内容を踏まえて、私共は今後のエンゲージメント方針を検討・決定していく方針です。仮にご対応が真摯ではないと判断する場合、私共は下記のアクションを検討します。

 

1.     弊社評価の公表

2.     株主総会における株主提案の上程

3.     株主総会における会社提案への棄権ないし反対

 

昨年同様、株主総会まである程度時間があるこのタイミングで私共の方針をお伝えする事により、ご検討と対話の機会を十分に担保する主旨である事をご理解いただけますと幸いです。マテリアリティの高い項目への真摯な取り組みは、中長期的にみた企業価値創造に決定的な差を生み出すものと考えます。重ねて「ポイントと事例」を踏まえた貴社開示・対応状況の再点検、及びより高次元の対応への取り組みをお願いいたします。

 

2025年が皆様にとって更なる飛躍の年となることを期待します。来年も引き続き対話の機会を頂けます様、よろしくお願いいたします。

 

ご参考:スコアカード評価の実例

 

James B. Rosenwald III

Co-Founder and Co-Managing Member

Dalton Investments, Inc.

    (翻訳/編集:ダルトン・アドバイザリー株式会社)

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